どんなものにも名前があり、名前にはどれも意味や名付けられた理由がある。では、有名なあの時計のあの名前には、どんな由来があるのだろうか?このコラムでは、時計にまつわる名前の秘密を探り、その逸話とともに紹介する。
今回は、ジョージ・カーンがCEOに就任して以降、“モダンレトロ”を標榜するブライトリングが新境地を切り拓いた新生「プレミエ」の名前の由来をひもとく。
福田 豊:取材・文 Text by Yutaka Fukuda (2021年10月17日掲載記事)
ブライトリング「プレミエ」

《 プレミエ オリジナルモデル(1943) 1943年に誕生した「プレミエ」の初期モデル。左は、3時位置に45分積算計、9時位置にスモールセコンドを配した2カウンターのRef.760。ゴールドケース。ケース径36mm。 右は、3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを配した3カウンターのムーブメント、ヴィーナス178を搭載したRef.734。SSケース。ケース径38mm。 》
ブライトリングの新CEOにジョージ・カーンが就任したのは2017年7月のこと。IWCの名将であったジョージ・カーンが、ライバルブランドのブライトリングへ電撃移籍したことは、文字通りに衝撃的な出来事であった。

それから4年余り。ジョージ・カーン率いる新生ブライトリングが目指してきたのは、いうなればブランドの歴史の再編纂だ。
ブライトリングというと「ナビタイマー」や「クロノマット」といったプロフェッショナルユースの高性能クロノグラフが有名。「腕に着ける計器」を標榜する、タフでマッチョでマニアックなブランド、というのが広く知られるイメージだ。そして、そんなブライトリングのイメージが、ほかのブランドには決して真似のできない、ブライトリングだけの特別な魅力になっていることもまた、誰もが知る事実である。
ところがジョージ・カーンは、そうしたこれまでのブライトリングのイメージとは違う、別の魅力を見つけ出そうとした。そこで世界的なヴィンテージウォッチコレクターであるフレッド・マンデルバウムをアドバイザーに招聘。過去のモデルから、その手掛かりをつかもうとしたのだ。
そうして生まれたひとつが、2021年の新作の「プレミエ ヘリテージ」コレクション。2018年に発表された「プレミエ」と同じく、1940年代に発売されていた「プレミエ」をモチーフにした新コレクションだ。


1940年代は第2次世界大戦により世界中が破壊され、疲弊していった時代である。しかし、永世中立を宣言したスイスは直接的な被害を受けることがなく、同国の時計産業は各国の軍用時計を製作するなど繁栄を遂げる。なかでもクロノグラフの名手であり、いち早く航空界に着目していたブライトリングは、航空機用コクピットクロックや軍用クロノグラフといった分野で大きく発展。1942年には回転計算尺を搭載した歴史的名作である初代「クロノマット」を誕生させている。
「プレミエ」が誕生したのは、そんなブライトリングが躍進し、そして第2次世界大戦が最激化していた、1943年のことだ。
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