広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
2020年10月に発表されたIWC「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン〝SFTI〞」。わざわざCEOのクリストフ・グランジェ・ヘアが説明するのは、新作映画「トップガン マーヴェリック」の公開が待たれるためか。ポルトギーゼの発表でさえCEOが出て来なかったと思えば、よほどの力の入れようだ。。
新しいトップガンはミリタリーウォッチの民生版なのです
「そもそもトップガンは、2007年にアメリカ海軍戦闘機兵器学校とのライセンス契約として始まりました。しかし、18年には、ネバダ州のファロン海軍航空基地を拠点とするトップガンの教官たちと共同で、トップガンの卒業生専用にふたつの時計を開発しました。今やIWCは米海軍と海兵隊の全飛行隊の時計に取り組むことを許可された唯一の会社です」
かつてのトップガンは、ロゴだけを追加したモデルだったはずだ。しかし、18年以降、大きく変わったということか?
《 クリストフ・グランジェ・ヘア 1978年、ドイツ生まれ。ロンドンのボーンマス大学でインテリアデザインを学んだ後、建築家としてキャリアを積む。2006年にIWCに入社。IWCミュージアムの設計や、トレードマーケティング、ブランドマーケティングなど、複数の部門でキャリアを重ね、17年より現職。元建築家である彼は「建築家が定義するのはビジョンの構築。建築家は社会の文化的創造者」と語る。 》
「パイロットたちは毎日コックピットで時計を着用し、設計者、材料エンジニア、デザイナーたちに貴重なフィードバックを提供しています。このおかげで、私たちのパイロットウォッチは、地球上で最も容赦のない環境であるF/A-18『スーパーホーネット』のコックピット内でも正確かつ確実に機能することが証明されるようになりました」。新しいトップガンは、過去のモデルと違い、そのノウハウを投じた時計というわけだ。「パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン〝SFTI〞は、基本的に18年の純然たるミリタリーウォッチの民生版です。パイロットとの多くの会話の結果、外装はさらに改良されました。マットブラックの酸化ジルコニウムセラミックス製のケースに加えて、ケースバック、クロノグラフプッシャー、セラタニウム製のピンバックルを備えた外装は、オールブラックで無反射であること、というパイロットの要望で改められたものです」。
かつて、IWCは、マークⅪを軍用で作り、後にそれを民生用として一部市販した。今回は、それをそっくり再現したというわけだ。
「新しいトップガンは、人と物が絶対的な限界に達する動作環境で確実に機能するように設計されました。もちろん、トップガンの時計を身に着けているほとんどの人はプロのパイロットではありません。しかし、彼らは正確で信頼性が高く、堅牢な計時機器が手首にあるという事実を高く評価するでしょう。トップガンとは、人生のあらゆる冒険に対応できる時計なのです」
新作映画「トップガン マーヴェリック」の話になると思いきや、そんなエピソードは一切なし。どこまでいってもIWCはIWC。これは本気の時計だったのである。
《 IWC パイロット・ウォッチ・クロノグラフ・トップガン“SFTI” 2018年に製作されたパイロット・ウォッチ・クロノグラフ“StrikeFighter Tactics Instructor”(SFTI)の民生版モデル。本誌第90号でも称賛した自社製のCal.69380を搭載する。自動巻き。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。セラミックス×セラタニウム(直径46mm、厚さ15.7mm)。6気圧防水。世界限定1500本。108万円。 》
Contact info: IWC Tel.0120-05-1868
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