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パテック フィリップのトゥールビヨンモデルとは。仕組みや魅力解説

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  • パテック フィリップのトゥールビヨンモデルとは。仕組みや魅力解説


    トゥールビヨンの挙動はメカニカルな魅力に溢れるが、パテック フィリップではダイアルから見せず、トゥールビヨン本来の機能性を追求する。トゥールビヨンの機能や魅力、パテック フィリップの搭載モデル3選を紹介しよう。
    《 「スカイムーン・トゥールビヨン 6002」に搭載される手巻きキャリバーR TO 27 QR SID LU CLの展開図。 》

    トゥールビヨンとは

    1962年、パテック フィリップのトゥールビヨン搭載ムーブメントは世界最高計時精度記録を樹立した。
    複雑機構の象徴として、メカニカルな挙動の美しさで名高いトゥールビヨンは、何を目的として生まれたのかを見ていこう。
    ブレゲ発明の世界3大複雑機構のひとつ

    トゥールビヨンは、スイスの伝説的な天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが発明し、1801年6月26日に特許を取得した懐中時計の精度向上に関わる複雑機構である。
    世界3大複雑機構のひとつに数えられるが、残りのミニッツリピーターと永久カレンダーについても、携帯式時計に搭載する機構としての原型を開発したのはアブラアン-ルイ・ブレゲだ。
    なお、パテック フィリップは1889年、グレゴリオ暦に対応した永久カレンダーの特許を取得している。
    重力による影響を分散させる

    現代では装飾的な性格が強いトゥールビヨンだが、開発当初は懐中時計の時代である。懐中時計は長時間ポケットの中で垂直姿勢を保持するが、ムーブメントが直立した状態では姿勢差による精度の乱れが大きい。
    水平姿勢での運動を基準とする機械式ムーブメントにとって、垂直姿勢での精度保証は難題であった。
    アブラアン-ルイ・ブレゲが見いだしたソリューションは、ヒゲゼンマイ・テンプ・アンクル・ガンギ車からなる調速脱進機を、ひとつのキャリッジに格納する機構である。
    キャリッジ全体を一定周期で回転させることにより、重力による調速脱進機への影響を分散させ、垂直姿勢での安定した精度を保証したのだ。

    トゥールビヨンの魅力

    現代のトゥールビヨンは、アブラアン-ルイ・ブレゲが開発した機構と基本設計において共通している。
    パテック フィリップを例外として、1980年代までほぼ採用されることがなかった、トゥールビヨンの審美性やステータス性について見ていこう。
    一般的な機械式とは違うキャリッジの回転

    多くのトゥールビヨン搭載モデルでは、キャリッジの固定を担うブリッジをダイアル側に露出させ、トゥールビヨンの運動を鑑賞できるスケルトン加工を施している。
    繰り返されるヒゲゼンマイの拍動やテンプの振り子運動、ゆったりと回転するキャリッジといった機械的運動を、穴の開くほど堪能できるのだ。
    回転周期が60秒であることを利用して、トゥールビヨンと連動する秒針を取り付けたモデルもある。
    高いステータス性を示す

    トゥールビヨンは精度保証のための機構だが、重く複雑な構造により、一般的な製造・組立技術では逆に精度を乱してしまう。小型化にも壁があり、アブラアン-ルイ・ブレゲ以降、1980年代まではほぼ封印された機構であった。
    現在では多方面の技術向上により採用する時計メゾンが増えているが、抜群に高度な複雑機構に変わりはなく、採用モデルは1000万円を超えるものが多い。
    トゥールビヨン自体の技術的洗練とともに価値も高まっており、高級腕時計を象徴する複雑機構だ。

    パテック フィリップの搭載モデル

    パテック フィリップのグランド・コンプリケーションは、機能性を反映する審美性を備える。超複雑時計の深い歴史を持つパテック フィリップの、トゥールビヨン搭載モデル3選を紹介しよう。
    冴える黒七宝の文字盤 6002


    スカイムーン・トゥールビヨン 6002 手巻き(Cal.R TO 27 QR SID LU CL)。55石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(直径44mm、厚さ17.35mm)。非防水。時価 》
    「スカイムーン・トゥールビヨン 6002」は、3大複雑機構を含む12の複雑機構を搭載した、デュアルダイアルのグランド・コンプリケーションである。
    手作業で浮彫を施したホワイトゴールドのケースには、クロワゾネ七宝とシャンルヴェ七宝による黒七宝のダイアルが収まり、王侯貴族向けの別注品を思わせる佇まいだ。
    表ダイアルの高度な装飾もさることながら、裏ダイアルでは恒星時表示や星座表を搭載した「セレスティアル」を堪能できる。
    《 「スカイムーン・トゥールビヨン 6002」のケースバック。ジュネーブおよび同緯度の北半球から見える星空が4枚重ねのサファイアクリスタル・ディスクによって表現される。 》
    《 「スカイムーン・トゥールビヨン 6002」に搭載される手巻きキャリバーR TO 27 QR SID LU CL。 》
    音響学と精密機械工学の傑作 5207


    《 「グランド・コンプリケーション 5207」。手巻き(Cal.R TO 27 PS QI)。37石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(直径41mm、厚さ13.81mm)。非防水。時価。 》
    「グランド・コンプリケーション 5207」は、3大複雑機構とムーンフェイズ・昼夜表示を搭載した、ブルー・ソレイユダイアルが静かに輝くモデルである。
    永久カレンダーは瞬時日送り式の窓表示を持つ。6枚のディスクとミニッツリピーター、さらにトゥールビヨンが動作するムーブメントは557の部品からなる。
    これだけの機能を、たったひとつのリュウズとスライドピースで操作する仕様だ。非常に精密なムーブメントから美しいチャイムが響く、エレガンスを極めた傑作である。

    《 「グランド・コンプリケーション 5207」のケースバック。 》
    2本ゴングのミニット・リピーター 5316P

    「グランド・コンプリケーション 5316P」は、3大複雑機構とムーンフェイズを搭載した、黒七宝ダイアルとプラチナケースが風格を漂わせるモデルだ。
    レトログラード日付表示針の先端にはダイヤモンド型のオープンワークを施し、シンメトリックなダイアルに高尚なアクセントを加えている。
    グランソヌリとプチソヌリが奏でる音色は、ミニッツリピーターの王者たるパテック フィリップの真骨頂だ。

    グランド・コンプリケーション 5316P 。手巻き(Cal.R TO 27 PS QR)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。プラチナケース(直径41mm、厚さ13.81mm)。非防水。時価。 》

    トゥールビヨンを知ってさらに楽しむ

    トゥールビヨンをこれ見よがしに搭載する時計メゾンが増える中で、パテック フィリップは実用性を兼ねた、トゥールビヨン本来の姿をムーブメントに収める。
    複雑機構の挙動は魅力的だが、高度なメカニズムをサファイアクリスタルケースバック越しに透かし見るのも一興だ。トゥールビヨンの本質的な価値を、パテック フィリップの傑作の中に探してみてはいかがだろうか。

    川部憲 Text by Ken Kawabe



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