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パルミジャーニ・フルリエ「トンダ」/時計にまつわるお名前事典

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  • パルミジャーニ・フルリエ「トンダ」/時計にまつわるお名前事典


    どんなものにも名前があり、名前にはどれも意味や名付けられた理由がある。では、有名なあの時計のあの名前には、どんな由来があるのだろうか? このコラムでは、時計にまつわる名前の秘密を探り、その逸話とともに紹介する。
    第20回は、パルミジャーニ・フルリエに鮮烈な印象を与え、高い評価を得ている新コレクション「トンダ GT」にも使用されている名称「トンダ」の名前の由来をひもとく。
    トンダ エミスフェール パルミジャーニ・フルリエにおいて「トンダ」というモデル名が使用された最初期モデルが、2010年に発表されたこの「トンダ エミスフェール」である。「エミスフェール」とはフランス語で「半球」を意味するが、このモデルではその「エミスフェール」に“旅する人のための高性能な時計”という意味を込め、ふたつの時間帯の時刻を表示する機能を搭載。特筆すべきは、1時間単位の時差だけでなく、1時間未満の30分や15分といった時差を持つ国や地域の時刻まで表示することを可能にしている点だ。自動巻き(Cal.PF337)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18Kローズゴールドケース(直径42mm、厚さ11.15mm)。30m防水。 》
    福田 豊:取材・文 Text by Yutaka Fukuda (2021年1月2日掲載記事)
    パルミジャーニ・フルリエ「トンダ」


    ポルトギーゼ Ref.325 1939年に製造されたポルトギーゼの第1世代。薄型手巻きムーブメントCal.74を搭載。第1世代は1939年から44年(52年もしくは51年説もあり)まで製造された。生産本数は304本程度とされる。44年以降は第2世代に置き換わる。SS(直径42mm)。IWCミュージアム所蔵。 》
    このところ、ケースと一体デザインのブレスレットを備えた、いわゆる「ラグジュアリースポーツウォッチ」の新作がいくつも発表されている。ことに2019年の秋ごろから、魅力的な新モデルが続々と登場している。具体的には、A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」、ショパール「アルパイン イーグル」、ベル&ロス「BR 05」、H.モーザー「ストリームライナー」、ウブロ「ビッグ・バン インテグラル」、チャペック「アンタークティック」といったモデルが挙げられる。
     そして、わけても高い評価を得ているのが、パルミジャーニ・フルリエの「トンダ GT」である。
    「トンダ GT」が発表されたのは2020年7月。クロノグラフの「トンダグラフ GT」とともに発表された。

    トンダ GT Ref.325 ケース形状は、2017年にジュネーブウォッチメイキンググランプリのクロノグラフ部門を受賞したトンダ クロノールを継承しつつ、デザイナーのディノ・モドロを起用することでトンダのデザインコードを再解釈し、特徴的なラグをアップデイト。人間工学に基づいて設計されたケースとブレスレットが一体化したスポーティーなフォルムに、パルミジャーニ・フルリエの新たな個性を吹き込んだ。自動巻き(Cal.PF044)。33石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。ステンレススティールケース&ブレスレット(直径42mm、厚さ11.2mm)。100m防水。世界限定250本。167万円(税別)。 》
    「トンダ GT」の特筆すべき点は、新CEOのダビデ・トラクスラーのプロジェクトであることだ。ダビデ・トラクスラーは2018年にパルミジャーニ・フルリエのCEOに就任。それまでのCEOは創業者のミシェル・パルミジャーニであり、ミシェル・パルミジャーニの好みはシックなドレスウォッチであった。
     しかしダビデ・トラクスラーは、自身の新プロジェクトをマーケットのニーズに合わせ、よりスポーティーなモデルの開発をすることにした。マーケットのニーズに合わせることは、パルミジャーニ・フルリエの歴史で初であったという。
     かくして誕生したのが「デイリーユースの時計」というコンセプト。デイリーウォッチというのもパルミジャーニ・フルリエの歴史で初のものだ。そうしてそれが、ケースと一体デザインのブレスレットを備えた、ラグジュアリースポーツウォッチのスタイルとされたのである。
     もうひとつ、「トンダ GT」の興味深い点が、外部デザイナーを起用したことだ。外部デザイナーの起用も、パルミジャーニ・フルリエの歴史では稀なこと。指名されたのは、ディノ・モドロ。ヴァシュロン・コンスタンタンの初代「オーヴァーシーズ」やコルム「ゴールデンブリッジ」を手掛けた名デザイナーである。
     というように「トンダ GT」はミシェル・パルミジャーニの時代とは大きく異なるテーマや手法、環境によって開発された。だがしかし、「トンダ GT」は、すべての面でパルミジャーニ・フルリエの伝統を正しく受け継いでいるのだ。
     そのいちばんは、ブランド創業時からの一大特徴である、黄金比に基づいたプロポーション。それを用いた代表であるしずく型のラグも巧みにアレンジされ、一体型のブレスレットと美しく調和されている。また、ミシェル・パルミジャーニの最初の時計「トリック」の象徴であるローレット加工による刻み模様のベゼルを採用したのも注目点だ。そんなことから「トンダ GT」は一目で、パルミジャーニ・フルリエの時計である、ということが分かる。もちろん、搭載されるのは自社開発の高精度ムーブメントである。
     つまり「トンダ GT」はパルミジャーニ・フルリエの本質はそのままに、より現代的かつスポーティーにアップデイトされている。そこが高い評価を得ているのだ。
    《 サテンとポリッシュ仕上げで構成されるステンレススティール製のブレスレットは、ケースから流れるように一体化されたデザインを持ち、さらに高い装着感を実現。パルミジャーニ・フルリエの特徴であるしずく型のラグも巧妙にアレンジされて組み込まれ、健在だ。 》
    さらに言うと、これは私見が大きくはあるが、「トンダ GT」はブレスレットの着け心地が素晴らしい。ブレスレットのコマが細かく軽やかに手首にフィットする感じは、数あるブレスレットモデルのなかでも随一の快さだ。そしてそれを筆者と同じく高い評価とする声をとても多く聞くのである。
     さて、「トンダ」=「tonda」とはイタリア語で「円形」の意味。ミシェル・パルミジャーニは、こう述べている。
    「この時計コレクションの名前は、イタリア・ベニス地方の言葉『トンド』に由来します。これは、ルネッサンス期の画家が大作を描くときに使った、円形のキャンバスを意味する言葉です。丸型のトンダコレクションは、パルミジャーニ・フルリエの美学をいろいろな角度から描き出すための、いわば未使用のキャンバスのようなものです」
     そして「トンダ GT」は、この言葉の通りに、パルミジャーニ・フルリエのまったく新しい美学を描き出したものと言える。まさにパルミジャーニ・フルリエにとっての新しい大作なのだ。
     だから、すでにクロノグラフ「トンダグラフ GT」の新作が登場するなど、バリエーションが拡大しているが、さらなる新作の登場が、大いに楽しみなのである。

    トンダグラフ GT クロノグラフだけでなく、年次カレンダーも搭載しているにもかかわらず、驚くほど戦略的な価格を実現したモデル。12時位置の大型日付表示と3時位置の月表示には、鮮やかなオレンジ色を採用し、差し色としてデザインのアクセントとなると同時に視認性も高めている。自動巻き(Cal.PF043)。56石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。スティールケース&ブレスレット(直径42mm、厚さ13.7mm)。100m防水。世界限定200本。225万円(税別)。 》

    福田 豊/ふくだ・ゆたか ライター、編集者。『LEON』『MADURO』などで男のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』にて時計連載や動画出演など多数。 Contact info: パルミジャーニ・フルリエ Tel.03-5413-5745



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