人気色では品薄が続いているカシオの“カシオーク”ことG-SHOCK「GA-2100」シリーズ。今回はGA-2110ET-8AJFを購入した筆者が着用インプレッションを行なった。その堅牢な設計と高い視認性、優れた装着感はツールウォッチとしてのあるべき姿を体現している。
佐藤心一:文・写真 Text by Shinichi Sato 2020年12月20日掲載記事
“カシオーク”ことG-SHOCK「GA-2110ET-8AJF」
カシオのG-SHOCK「GA-2100」シリーズは8角形のベゼルなどから、デザイン面で注目を浴びることの多いモデルである。しかし、筆者はカシオの技術力の高さと良心的な価格、そして熱心な改良によって作り込まれた完成度の高い1本である点を評価し、購入した。
購入の決め手となったのは、ツールウォッチに求められる3つの要素と筆者が考える「薄い」「軽い」「頑丈」のすべてを備えているからである。そして、装着感に優れている点にも驚かされた。本機には既に多くのレビューが存在するので、今回はGA-2100シリーズの由来と基本的な機能をおさらいしながら、同作の魅力に着目してお伝えする。
GA-2110ET-8AJFの購入とレビューのきっかけ
アースグレーカラーの本機の購入を決めたのは、初作のブラックやレッドの発売時に店頭で見て、魅力的なモデルであると感じつつ、買うならホワイトかグレーが欲しいと考えていたためである。入荷の報を聞いて購入を即決した。
GA-2100シリーズは2019年8月に発売後、ネットでは誰が呼んだか「カシオーク」として人気を博し、定番モデルであるにも関わらず人気色は品薄が続いている。そのニックネームは、「クロノス日本版」読者およびwebChronos読者ならすぐに分かるであろう、あのモデルに似ていることが由来だ。
《 カシオ「GA-2110ET-8AJF」 クォーツ(Cal.5611)。電池寿命約3年。ラバー×カーボン(直径45.4mm、厚さ11.8mm)。20気圧防水。1万4500円(税別)。 》
しかし、このニックネームは双方に敬意が欠けていると筆者は考える。GA-2100シリーズは「デザインが有名モデルに似ているから人気が出た」と片付けてはならない良作であると考えており、それを伝えるべく今回のレビューを申し出た。
では、GA-2100の生まれた経緯を振り返りながら詳しく述べてゆこう。
GA-2100シリーズについて
GA-2100シリーズは、数あるG-SHOCKのコレクションの中で独立したコレクションとして扱われている。コンセプトは、ファーストモデルとなる「5000」シリーズのデザインテイストを継承したアナログモデルを作ることであった。
初代G-SHOCK「DW-5000C」は、樹脂パーツで覆われた“奇抜なデザイン”で驚きの耐衝撃性能を実現した、文字通りエポックメイキングなモデルである。その系譜を受け継ぎつつ、あらゆる面で初代を超えるべく、外装をフルメタル化した「GMW-B5000」の発表がG-SHOCK誕生35周年の18年3月。GA-2100が19年8月発売であることのを考えると、同作はG-SHOCK開発チームにおいて“オリジン”を再解釈しようという取り組みの中から生まれたと想像される。
オリジンを継承するコンセプトの中で、薄さを追求した点は興味深い。筆者手持ちの5000シリーズの現行機種「DW-5600」は厚さ13.4mmで、文字盤鉛直方向への飛び出しも控えめである。G-SHOCKには一般的に凹凸が大きくてゴツいイメージがあるが、5000シリーズは大雑把に言って平均的なダイバーズウォッチ程度の厚さに収まっている。デビュー当初から、実用上は薄い方が好ましいとの考えがあったのだろう。
《 裏側から見ると、黒いカーボン樹脂ケースと、外装のグレーの樹脂が精度高く組み合わさっているのが見える。また、今作ではクイックリリースタイプのバネ棒が採用となった。バネ棒にアクセスするための隙間がなく、この方式しか採用できないようには思える。 》
GA-2100ではさらに薄さに磨きが掛けられ、厚さ11.8mmとなった。この薄さと、G-SHOCKに求められる堅牢さを両立させているのが「カーボンコアガード構造」である。
落下のような衝撃に対しては、G-SHOCK伝統の耐衝撃構造「ショックレジスト」が効果を発揮する。しかし、引っ張りやねじりに対してはケースの強度を高めて対応する必要がある。それには、ケース厚さやリブ構造の改良による手法と、ケース材料を変更する手法が考えられる。カーボンコアガード構造は後者に対するソリューションであり、軽量かつ引張強度や比弾性率に優れるカーボンを用いることで、必要な強度を確保しながらコンパクトかつ、ストラップ込みでたったの51gと軽量に仕立てた。
GA-2110ET-8AJFの機能と文字盤のディティール
さて、今回のGA-2110ET-8AJFのレビューに移る。GA-2110とは、GA-2100シリーズのうち、多色の樹脂を一体成型(本作ではベゼルが少し濃いグレー)したものを指すリファレンスナンバーだ。一方のGA-2100は、樹脂外装が単色となる。GA-2110の方が多色成型に手間が掛かる分、GA-2100が1万3500円に対し、1万4500円とわずかに金額が割増になる。
センターの時分針に、9時位置にレトログラードの曜日表示、5時位置に各種表示を行う液晶画面を備える。太くハッキリとした時分針は視認性が良い。液晶画面の通常状態では、分割されているうちの下部で秒を常時表示し、上部を月日表示か時分表示から選べる。また、液晶の時分表示は12時間と24時間制表示の切り替えが可能である。時間設定は液晶画面上で行う。設定を終了すると時分針はあるべき場所まで自動で移動する。
《 薄いグレーの各種表示とインデックス周りのデザインは、時計と言うよりも“ガンプラ”を想起させる。ガンプラを手掛けるバンダイも、類稀な樹脂成型技術を持ち、ファンを驚かせるチャレンジを続ける日本を代表する企業である。この点に、カシオとの共通点を感じるのは筆者だけだろうか? 》
10年以上前に筆者が購入したG-SHOCKのデジアナモデルでは、液晶上での時間と針の位置が独立していて、それぞれを調整する必要があったため、使い勝手を常に考えるカシオの姿勢がここでも見て取れる。分針は20秒に運針する。太い分針がスムーズかつキレ良く動作する様は見どころのひとつだ。
その他の機能は、ストップウォッチ、タイマー、時刻アラーム5本、時報と多くのG-SHOCKが備える機能はそろっている。暗所での視認性を確保する照明は、液晶用バックライトと、4時と5時のインデックスの間に文字盤用LEDライトを備える。2時位置のライトボタンを押して点灯させた後、消灯する際はボヤっとフェードアウトするエフェクトを備えている。ちょっとしたことだが、雰囲気を出すのに一役買っている。
文字盤は明度の異なる部品を組み合わせており、浅い溝で1分の目盛りを刻んでいる。この溝は浅いが意外なほど視認性は良好だ。手間の掛かる加工や仕上げを施していない文字盤およびインデックスであるが、情報量を多くしながら、安っぽく見せないところは、カシオが長年培ってきた樹脂加工技術とデザインセンスの為せる業だ。
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